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アルピーヌA110 燃料ポンプのよくある問合せ

当社でアルピーヌA110パーツの開発・販売を行っていることから日々、色々なお問合せをいただきます。

その中で、複数件あるお問合せに関して当社見解をご案内します。

 

燃料ポンプの故障が多いようですが原因は何ですか?

 

A110低圧燃料ポンプは2021年4月にリコールが出ています。ですが、リコール対応後も故障事案がいくつか発生しているのは事実のようです。基本的に低圧燃料ポンプは特殊な車を除き汎用品です。記憶の新しいところではDENSO製 低圧燃料ポンプが数百万台の世界的リコールになりました。汎用品のため様々な車種・メーカーに派生してしまった事案でした。この事案ではインペラーと呼ばれる燃料を吸い上げるための羽根車の射出成形条件(金型温度不適切)に不備があり、インペラーが規定の結晶化を満たしていなかったために膨潤し破損してしまうことが故障の原因でした。

 

当社見解ですが、一般的に低圧燃料ポンプが故障する原因は概ね3つ。

【空打ち】【熱害破損】【異物吸い込み】です。設計・製造不良は除きます。

 

 

【空打ち】はその名の通り燃料の少なすぎや過大な横Gなどで燃料を吸い込むことが出来ずポンプが燃料を吸い込まない状態で稼働する状態を指します。燃料(ガソリン)には潤滑性能もあるためポンプ自体の潤滑も担っていますが空打ち状態になると潤滑物がなくなるためインペラーの損傷やその他被害が発生することになります。一回のガス欠や空打ちで壊れないでしょうと思うかもしれませんが吐出量の計測を行うとほとんどの場合、数%以上の吐出量の低下(燃圧低下)が確認できます。空打ちを何度も行ってしまうと最終的にはポンプの焼き付きや極端な吐出量低下という状態になります。

 

【熱害破損】は、ポンプ本体の設計許容値以上の過熱によりモーターやインペラーが破損・溶解する状態を指します。燃料が極端に少ない(ポンプがガソリンに浸っていない)状態、かつ熱害部位(マフラー配管など)が近くにありタンク内燃料温度の高い状態が長時間続くとモーターやインペラーが設計耐用温度を超えてしまい破損・溶解の原因となります。

一昔前のチューニングカーなどではアウトタンク式の燃料ポンプなどを搭載していたため、ポンプモーターの過熱による損傷などがありましたが通常のインタンクタイプの燃料ポンプでは熱害破損はほとんど見ることはありません。ですが悪い条件が揃うと破損に至るケースもあります。

 

【異物吸い込み】はそのままですね。通常はポンプ吸入口前にフィルターがついているため、極端な異物吸い込みはないはずですが、何らかの理由でフィルターが破損し、破損フィルターを吸い込んでしまうというケースもあります。

 

A110の低圧燃料ポンプ故障はどうでしょうか?

 

先ほど申し上げたように燃料ポンプは汎用品です。ところがA110のみで破損するという事は車両固有の【なにか】があると考えられます。それは熱害です。

 

 

A110の燃料タンクはラジエターファンの後ろにあるため長時間熱風にさらされています。そして燃料タンク底面凹部位10MMの位置にラジエターパイプがレイアウトされています。また、フロア下燃料ラインがラジエターパイプ及び水冷インタークーラーパイプやエアコン低/高圧ラインと隣接されています。それらにより燃料タンク、及び燃料温度が上昇してしまう条件がいくつも揃っています。

※エンジンの熱で燃料温度が上がってしまうと勘違いされている方がいますが、すべてのガソリンエンジン搭載車はフューエルデリバリーがエンジン本体の熱害を受けるため、A110固有の問題ではありません。

 

では、燃料温度が過度に上昇するとどのような事がおきるでしょうか?

燃料を吸い込むためのインペラーは樹脂で出来ているので熱膨張(※1)により外壁・外周部との接触にて溶解・破損に至ることが考えられます。また、モーターシャフトとのクリアランスも不適になりシャフトが空回りしてしまうことも考えられます。燃料ポンプの不良というよりはレイアウト起因で燃料温度(※2)が想定値以上に上がってしまうことが根本的な要因と感じます。では、対策方法はないのでしょうか?

※1)インペラーの膨張率は設計材料や成型条件に左右されます。またインペラーに採用される樹脂の耐用温度は200℃程度です。

※2)当社デモカーA110燃料タンク温度は77℃まで上昇を確認

 

簡単かつ有効なのは燃料を多めに入れておくことです。低圧燃料ポンプは設計上、燃料タンク内の燃料で冷却しています。ですので燃料を多めに入れておけば冷却が促進されます。燃料タンク本体に耐熱布施工を行い熱源(ラジエターパイプ隣接部など)からの熱転移を防ぐのも有効ですね。また、当社製ラジエータークーリングパネルでラジエーター排熱風から燃料タンクを保護することで燃料温度を大幅に低下させることも可能です。2020年のリコール以降も熱起因による破損と考えるなら有効な手段となります。

 

ただし、燃料を多めに入れておけば必ず故障しないというわけではありません。長時間のアイドリングや都市部での低速渋滞走行では最終的に燃料温度が上昇してしまうからです。理論的に燃料は少ないよりは多いほうが良いという事です。

 

そうは言ってもDENSO製低圧燃料ポンプのように熱起因ではなく製造過程の樹脂結晶化問題などが故障原因の場合は別問題となります。

 

なお、2019年後半までに出荷のA110は、ラジエター出口側シュラウド形状が悪く燃料(タンク)の温度が上がりやすい条件がそろっていますが、加工にて2020年前半以降の改良型シュラウド形状に改造ができます。

 

 

 

次回はオルタネーターの故障についてお話したいと思います。