アルピーヌA110 オルタネーターのよくある問合せ

当社でアルピーヌA110パーツの開発・販売を行っていることから日々、色々なお問合せをいただきます。

その中で、複数件あるお問合せに関して当社見解をご案内します。

 

※ご質問をいただいたため、CVTとDCT/EDCの違いを追記しました。(9月23日)

 

オルタネーターの故障がまれにあるようですが原因は何ですか?

 

アルピーヌA110やメガーヌRSのオルタネーターはリコールやサービスキャンペーンの案内が出るほどではないですが、故障事例はいくつか発生しているようです。

 

さて、オルタネーターはどんな役割をしているでしょうか?

 

車が好きな方ならご存じでしょうが、端的に言うと【発電機】となります。

エンジンの回転動力を利用してモーターを回転させ発電をおこない、バッテリーへの充電や、走行に必要な電気を供給する役割を行っています。

では、オルタネーターが故障するとどうなるでしょう?

電気が供給出来なくなってしまうとバッテリーに充電が出来ずバッテリー上りとなってしまったり、走行に必要な電力が供給出来ずにエンジンが停止してしまったりします。

 

でも、何十年も前から使われている部品なのに現代の車で故障するの?おかしいんじゃない?

と、思われる方もいるでしょう。実は現在の車でもオルタネーター故障は上位にランキングしています。日産セレナで大型リコールが出たことも記憶に新しい事案です。驚くかもしれませんがオルタネーターは現在でも様々なメーカーの車で故障が発生しています。

 

その理由は簡単です。オルタネーターという名称は昔から変わりませんが、役割が昔に比べ大幅に変わっているからです。

本稿車両ではないですが、アイドリングストップからのエンジン再始動や加速アシストにオルタネーター動力を使う車種も存在しています。

 

 

オルタネーターが故障する原因は大きく2つ。

 

【ICレギュレーター/レクチファイヤー破損】もしくは【ワンウェイプーリー破損】です。

 

【ICレギュレーター/レクチファイヤー破損について】

以前の車はエンジンがかかっている間はオルタネーターが発電をし続けていました。この発電がエンジンの動力を使うため燃費の悪化につながります。燃費の悪化はCO2排出量を増やすため環境へ優しくないですね。そこで考え出されたのが【充電制御】という考えです。バッテリーが十分に充電されていて車両への電力供給に問題がなければオルタネーターの発電行動を止めてしまおうということです。それにより燃費向上とCO2排出量の削減が見込まれるため、近年のほぼすべての車両は充電制御を行っています。それにより、オルタネーターは発電と停止を繰り返すことで構成部品であるICレギュレーターやレクチファイアーと呼ばれる電気を整流したり発電を制御する部品に負荷が多くかかるようになってしまいました。

 

また、現代の車はエンジンルームに部品がパンパンに詰まっていることも負荷がかかる要因です。エンジンルームに部品がパンパンに詰まっているとどうなるでしょうか?エンジンルーム内の部品温度が高くなってしまいますね。

そのため、オルタネーター構成部品のICレギュレーターやレクチファイヤが高温になってしまい破損するケースが発生するのです。

 

 【ワンウェイプーリー破損について】

エンジンの出力はベルトを利用してオルタネーターに伝達しています。

クランクプーリーからベルトを介してオルタネータープーリーに回転動力を伝え、オルタネーターモーターを回転させています。このベルト、最近は【鳴き】と呼ばれる現象が減ったと思いませんか?

昔の車はベルトがキュルキュル鳴いていることが多くありました。この不快な鳴きを抑えるためにオルタネーターに【ワンウェイプーリー】を採用しています。ベルト張力へのダンパーとしての役割と考えてもらうとわかりやすいかもしれません。

ベルトの破損防止やエンジン出力を効率的に伝達するなど燃費の向上にも一役買っています。名前の通り、一方向には回転させますが反対方向には回転させないのが特徴です。

 

このワンウェイプーリー、それらの役割を果たす代わりに非常に強いストレスがかかり続けています。特に輸入車が多く採用するDCT/EDCなどのミッションは機構上、動力変動が大きいため、国産車を中心としたCVTミッション車などに比べ負担が多くかかることになります。CVTの場合はシームレスに動力伝達を行うためエンジンの回転変動が少なく済みます。よってプーリーへの動力入力の変化も少なくて済みます。他方、DCT/EDCミッションの場合はマニュアルトランスミッション機構がベースのため、シフトアップ/シフトダウンでエンジン回転数が必ず変動します。そのため、ギヤが変わるタイミングで必ずワンウェイプーリーへの入力方向が変化することになります。そして、A110は7速あるので余計に入力変化が多く発生します。という事は、CVT車などに比べるとプーリーへの入力負荷が数倍~数十倍かかることになります。なお、ある程度の走行距離を重ねるとプーリー(内臓ワンウェイベアリング)が破損するのは自動車整備従事者なら周知の事実です。

 

そしてこのワンウェイプーリーが破損するとエンジン動力をオルタネーターに伝えることができなくなり充電不良が発生する事となります。

 

 

故障原因はわかりました。A110やメガーヌRSで対策方法はありますか?

 

一つは燃料ポンプ同様、熱対策です。

エンジンルーム内温度が下がればICレギュレーターやレクチファイアーでのトラブルは軽減できます。

 

ワンウェイプーリーは個人対策は難しいかもしれません。

A110・メガーヌRSはDCT(EDC)ミッションが魅力ですが、加減速やシフト時の動力変動が大きくワンウェイプーリーに負荷が大きくかかるのが事実です。ベルト張力を調整するテンショナーのセット位置見直しでの負荷軽減や高耐久性を持たせたプーリーの登場が望まれます。いずれにせよ消耗品的な要素が強いため、走行が進めば修理が必要となるのは他メーカー(他車)も同様です。

 

 

オルタネーター故障の兆候を確認したのであればAmazonで\1,000~\2,000程度で買えるシガーソケット差し込み型電圧計などでも発電の様子が観察できます。普段から発電パターンを知っておけば不具合発生時の変化をつかみやすくなります。

A110・メガーヌRSは充電制御車両のため、12.2V~14.8程度の間を行ったり来たり表示します。基本的には減速時に回生モードになるため加速時には電圧低め・減速時に電圧高めの表示となります。なお、バッテリーは満充電とならない(しない)制御のため、バッテリー充電状態の確認ではオルタネーター故障の判断はできません。リアルタイムでの発電量(電圧・電流)確認がもっとも正しい評価となります。

 

アルピーヌA110やメガーヌRSはとても楽しい車です。あまり故障の心配ばかりせず上手に付き合っていくことをお勧めします。